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産経新聞 2007/09/14 03:05
http://www.sankei.co.jp/culture/enterme/070914/ent070914001.htm
 

 源氏と平家に分かれて抗争を続けるギャング団と流れ者のガンマンが、埋蔵金をめぐり壮絶な銃撃戦を展開-。邦画界を代表する鬼才、三池崇史監督の最新作「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(15日公開)は、こんな破天荒な設定の西部劇だ。おまけにせりふは全編英語。監督は「大ベストセラー小説の原作か、ジャニーズ系スターが出演する映画しか作れない今の邦画界に挑戦状を突きつけた」と熱っぽく語った。(岡田敏一)

 

 壇ノ浦の戦いから数百年後。平家の落人(おちうど)が開拓した寂れた寒村、湯田(ユタ)に埋蔵金が隠されているとの噂が流れる。全国からならず者が押し寄せ、そこに平清盛(佐藤浩市)率いる平家ギャングが登場。埋蔵金を独り占めしようと、ならず者を追い出し暴力で村を支配する。

 

 ところが源義経(伊勢谷友介)率いる強敵、源氏ギャングが来襲。埋蔵金をめぐり血で血を洗う抗争を展開する。そこに謎のガンマン(伊藤英明)、村で雑貨屋を営むルリ子(桃井かおり)、孫の平八(内田流果)、平八の母親、静(木村佳乃)らが絡み、物語は単なる抗争から因縁含みの愛憎劇の様相を呈する…。

 

 時代劇感覚で繰り広げられる西部劇。平家ギャングのシンボルカラーは赤、対する源氏ギャングは白。日本人におなじみの紅白対決だ。とはいえせりふは全編英語で邦画なのに字幕が付いている。キャストの演技もけれん味たっぷりでけっこう大げさ。

 

 やはり、世界市場を狙った?

 

 「そうでもないんです。狙って作っても西洋人には届きませんから。むしろ日本人に字幕で見せる西部劇という印象を与えたかった。せりふもわざと味のあるジャパニーズ・イングリッシュにしました。発音がネイティブだとその時点で邦画でなくなりますから。英語でしゃべるからみんな動作も外国人みたいになっちゃってね…」

 

 とはいえ、ハリウッドの鬼才、ロバート・アルトマン監督のカメラマンを務めた栗田豊通が撮影担当とあって、作品の質は立派な世界照準。

 

 「米でのし上がった人ならではの徹底した実力主義ですよ。『あいつ、いいヤツだけど下手だからクビ』ですから。人情なんて関係なし」

 

 「現場はギャンブルのようなもの。役者には予想外の反応を求める」というのが持論。源氏ギャングの豪傑役、石橋貴明の終盤の怪演もそうしたポリシーの産物かも。

 

 英語ならぬ映画で会話する仲のクエンティン・タランティーノ監督も伝説のガンマン役で登場する。彼が若き日のルリ子にたどたどしい日本語で「豆腐が絹ごしだろ!」「すき焼きの甘みは白菜から取るんだ!」と怒ってちゃぶ台をひっくり返す場面には大笑いしてしまった。

 

 「4000本売れたらモトが取れるVシネマの世界で長く仕事をしたので、低予算を知恵で補い、面白かったら何やってもいいっていう製作ポリシーなんですよ」

 

 バッド・グッド・ムービー(スカした芸術系映画)よりグッド・バッド・ムービー(良質なB級娯楽映画)を標榜する監督ならではの快作。北島三郎が熱唱するエンディングのテーマソングが胸に染みる…。

 

 

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