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J-CASTニュース 2007/9/ 8  
http://www.j-cast.com/tv/2007/09/08011043.html 

   三池崇史監督の作品はどれもこれも一風変っている。「カタクリ家の幸福」「ゼブラーマン」「インプリント~ぼっけぇ、きょうてぇ~」「46億年の恋」。どれもジャンルが違うオリジナルで、簡単に理解できる作品は無い。この「スキヤキ・ウェスタン ジャンゴ」もそうだ。

 

  タイトルに「スキヤキ・ウェスタン」とうたっている。イタリア製のマカロニ・ウェスタンの向こうを張った日本製西部劇というわけだ。ちなみに、アメリカではイタリア製西部劇のことを「スパゲッティ・ウェスタン」と呼んでいた。しかし「荒野の用心棒」が日本に輸入されたときに、淀川長治が「スパゲッティでは細くて貧弱そうだ」ということで「マカロニ・ウェスタン」に改名した。以来、日本ではこの名が定着したが、アメリカでは通じない。

 

   時は源氏と平家が決着をつけた壇ノ浦から数百年後、だから時代劇でもある。冒頭ガラガラ蛇が鶏小屋から這い出して来る。鷹が蛇を脚で掴み飛ぶ。寝ていたガンマンがピストルで鷹を撃ち落とす。蛇の喉をナイフで裂いて玉子を取り出し、小鉢に割って熱いスキヤキを食べる、と念の入った画面に続いてタイトル。そのガンマンがクエンティン・タランティーノだから驚く。もっとびっくりするのは、タランティーノに続いて出て来る役者が総て英語で喋り、字幕が出ることだ。

 

   山あいの寒村に平家の埋蔵金が埋められていると言い伝えられている。義経(伊勢谷友介)率いる源氏ギャングと清盛(佐藤浩市)の平家ギャングが対立しながら宝探しをしている。そこへふらりと一人のガンマン(伊藤英明)。用心棒の売り込みだ。どっちサイドも雇いたいと申し出る。黒澤明の「用心棒」、マカロニウェスタンの「荒野の用心棒」のパロディでストーリーが進む。

 

   タランティーノやその盟友、ロドリゲスばりにアクション、セックス、流血がいたるところで起こる。源氏と平家の駆け引き、裏切り、対決と滅茶苦茶のバトルが展開される。どっちがどっちと分かるように赤(平家)と白(源氏)の衣装や鉢巻をしている。出演陣が豪華。保安官に芸達者の香川照之、与一に安藤政信、弁慶に石橋貴明(タマタマを去勢され義経に言い寄る可笑しさ)、静に木村佳乃(セクシーな踊りを披露)、そしてただの村の女だと思っていたら実は伝説のBB(ブラディ・弁天)の桃井かおり。

 

   タイトルのジャンゴは「続・荒野の用心棒」でフランコ・ネロの扮するガンマンの名前だ。ことほどさように薀蓄を傾けた映画で、パロディだけにアソコはオカシイなどと言わせない。「祇園精舎の鐘の声、沙羅双樹の花の色」と平家物語の冒頭の英語訳が何回も登場する。結構笑いを取りながら、英語のセリフに惑わされてあっと言う間に2時間を越える映画を見終わる。生き残れるのは一人だけ。バラの花「ラブ」が大切な意味を持つ。本作はこの9月、ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された。

 

恵介

オススメ度: ★★★★☆

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